10. 何もいらない
作詞・作曲:宮沢和史
Arranged by 矢野顕子
宮沢和史
――僕の人間の小ささを、矢野顕子さんのピアノが大きくしてくれた
 上條恒彦さんからお話をもらったとき、どんな曲を書けばと正直悩みました。それで、考えるためにタイに行ったんです。リュックひとつでタイに行って、汚い安宿に一週間ぐらいいたのかな。昔、20代の頃はそういう旅をよくしてたんですが、久しぶりでした。エアコンもなく天井にファンがまわる部屋の中で、何もいらないよ、生きていくのに、と思ったんです。いろんなものを見て、希望も絶望も知り尽くすと人間ってどういう境地になるんだろう。愛する人がいてくれる、それだけで何もいらない。僕はまだまだそんな境地に行ってませんが、想像して書きました。ということは、今の僕の手に負える歌じゃないんですが、でもまあ歌っちゃえと、僕の人間の小ささを、矢野顕子さんのピアノが大きくしてくれたという感じです。
 矢野さんのピアノで歌うというのは、ライブでは何度かありましたけど、僕のレコーディングでというのはありそうでいてこれまでなかったんです。改めて矢野さんの凄さを知ったし、歌っていてとても楽しかったです。歌詞の世界や、僕のこれまで歩いてきた道を知ってて、ああいう演奏を選んでくれたのです。
FROM ARRANGER 矢野顕子
―― 二人だけの特別な空間
宮沢さんが、わたしのピアノをよーく聞きながら歌っている時、
それは特別な空間を二人で造っている時なのです。
そこには誰も入れてあげません。意地が悪いのです、わたしは。
だって、誰にもこれを邪魔されたり、壊されたくないんですもの。
FROM ORIGINAL SINGER 上條恒彦
―― 美しい「希い」を美しいままに
 知的障害者支援のコンサートで、当の障害者達と「風になりたい」を大合唱したのが宮沢ソングとの最初の出会い。ワイルドでヴァイタルな、感動的な合唱だった。
 「何もいらない」は、2003年7月ぼくがリリースした『お母さんの写真』のために書いてくれた曲。甲府の先の八ヶ岳に住んでいるぼくに、糸井重里さんがすすめてくれた「中央線」も入れた。
 「何もいらない」は、初老のぼくを視野に入れながら、ご自身の老境への「憧れ」とか「希い」を書かれたのだろう。美しい曲である。だが、無為に馬齢を重ねてしまったぼくには、美しく謳い上げるのが難しかった。
 しかし、今回のご自身のヴァージョンを拝聴すると、矢野顕子さんのピアノも素敵だし、何のケレンもなく、美しい「希い」を美しいままに歌っておられる。羨ましいと思った。
MUSICIANS
矢野顕子 Acoustic Piano
『お母さんの写真』
楽曲紹介 - 何もいらない
2003年にリリースされた上條恒彦のアルバム『お母さんの写真』への提供詞曲。オリジナルは高野寛がプロデュース。同アルバムには他にTHE BOOM「中央線」のカバーが収録されている。
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「何もいらない」の試聴ができます。再生にはWindows Media Player、またはRealPlayerが必要です。
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