08. モクレンの花
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作詞・作曲:宮沢和史
Produced and Arranged by 森 俊之
僕はどんなにひっくり返っても女性にはなれないけど、歌の中で、作詞する場合は女性になることができる。それが人に曲を書くときの楽しみなんです。こんなふうに人を愛したいと自分が女性であったらと想像したり、女性にこう愛してほしいという想いもあるかもしれないのですが。この歌詞は去年、木曽福島近くの宿場町で咲いているモクレンの花を見て書いたものです。凛としていて、可憐で、でも質素で。花なのにこんな人間になりたいなと思って書きました。自分にとって大事な歌だと、できたときに思いました。最近、家の庭を改造したのですが、この曲を書いた記念にモクレンを一本植えました。来春咲くのが楽しみです。
今回のアルバムの中で一番最初に取りかかった曲です。小泉今日子さんヴァージョンは、ルーツ・フォーク・ロック風なアレンジでした。ティンパンの面々が説得力のある演奏で歌を支えてました。最初に宮さんと打ち合わせをした時に、僕のほうから「冬の夜をせつせつとリリカルに、みたいな匂いにしたいですね」と言いました。打ち込みで作ったノイズ・ループやリズム・トラックはあくまで淡々と冬の夜空の雰囲気を醸し出す。ハープが歌を支え、弦カルテットやピアノ、アコギで、冷たさの中のちょっとした温もりを表現したかった。歌詞との温度感バランスがうまくいったのではないかと思います。
私は、この唄が大好きです。本当に生涯大事にしたい曲のひとつです。子供の頃に大好きだった昭和歌謡的な懐かしさを感じたり、メロディーと言葉の美しさに酔ったり。大人の女性の美しいラブソングですよね。ひっそりと健気に人を愛する女性像と、モクレンの花の持つ決して派手ではないけれど力強い美しさのイメージが重なります。初めて聴いた時、映画みたいな映像が勝手に頭の中で流れ出しました。育った家の庭にあったモクレンの花、母親の後ろ姿、山道を走る路面バス、少女時代の恋、ひなたぼっこをしている猫、何故だか幼い頃の記憶の映像が止めどなく流れ出しました。切なくなって少し泣きました。自分の心の中に僅かに残っている純粋な少女の気持ちを思い出したのかな? そんな気持ちのまま人を愛せたらいいなと、この曲を聴いて思いました。
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・関連リンク
KOIZUMIX - 「モクレンの花」のオリジナルシンガーである小泉今日子さんのウェブサイト。
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