01. Pulse
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作詞:SANDII 作曲:宮沢和史
Produced and Arranged by 佐橋佳幸, 森 俊之
この曲を書いた90年代中頃、僕はブラジルにどっぷりはまっていました。この曲を提供したSANDIIさんと一緒にリオへカーニバルを観に行ったこともあります。「Pulse」はその時期に、ブラジル録音のアルバムを作るということでSANDIIさんに頼まれて書いた曲のうちの一曲です。すごく気に入っていて、これはいつか自分で歌おうと思ってたんです。SANDIIさんのオリジナルの完成度がすごく高いので、これ以上どうしようかと思ったのですが、森俊之さんと佐橋佳幸さんに相談してるうちに、暖かい南米で生まれたロマンスというよりか、寒い街でのラブ・ソングにしようというアイデアがみんなの中に出てきて、キーワードは「リオ」ではなく「ニューヨーク」になったのです。リオの気分で録ったら、たぶんSANDIIさんのオリジナルは超えられないですから。寒い音楽、コートを着ているような、両手に息を吹きかけてるようなラブ・ソングにしようということで新たにレコーディングしました。楽器の編成的にはオリジナルとあまり変わりませんが、歌として全然違う景色が、聴いた人みんなに見えるんじゃないかな。
以前から佐橋佳幸さんと「一緒にやりたいですね」なんて言っていたところに、宮さんから「共同でやってもらえませんか?」と言われ、そういういきさつもあってとても楽しいレコーディングとなりました。ベーシックなギターリフを佐橋さんが考え、メールのやり取りで基本的な構成とコードの積み等を僕が考え、あとは現場でああだね、こうだねって感じで作りました。原曲はサンバ・カンソンというかブラジルの古歌曲みたいな素晴らしいものなのですが、我々的に打ち合わせの段階で「場所をブラジルからどこか都会にしたいね」ということになりました。都会=ニューヨーク=ジャジーという僕の短絡的な発想で(笑)、間奏は4ビートになったり、ならば「トランペットを入れよう!」と宮さんが言い出したり、佐橋さんのギターはいい意味で70年代のアメリカン・シティー的なアプローチだったり、フェイザーをつけたローズ・サウンド、エレキ・ベースからウッド・ベースへ、そして味のあるチト河内さんのドラム!と結構こだわって、みんなでレコーディングした結果です。そこに素晴らしいストリングスが載った時、すでに宮さんオリジナルって言えるものが出来上がったのではないでしょうか。
ちょうどトリオ・エスペランサが私の書いた「WATASHI」のカバーをリリースした頃、何となくブラジルと縁を感じ、MIYAに誘われるままついていったあのリオのカーニバル。死ぬまでに一度はこの目で、この耳で、五感で体験したかったお祭りのひとつでした。大好きなニューオリンズのマルディグラ・パレードがとてもマイナーに思え、あまりのスケール感に圧倒され、孕んでしまったブラジル産のアルバム『WATASHI』。中でもMIYAと一緒に書いたこの「Pulse」という曲は、激しいパレードが星のように夢を残して消えた後、熱い想いだけが気だるいカラダの中を泳いでいるようなスイートで物悲しい、淡いサウダージ・ソングです。
MIYAの中で息を潜めている大いなるロマンティック魂が、彼の声を巧みに操り、新たに生まれた「Pulse」は完璧。きっと目を閉じればMIYAの耳の奥の空の星からは永遠の脈拍、サウダージがこだましているのでしょう。
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・関連リンク
sandii.info - 「Pulse」のオリジナルシンガーであるSANDIIさんのウェブサイト。
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